一生懸命見つめるその先は・・・
1歳児クラスのみんなが大好きな絵本です。
二十数年前、私は幼い子供たちの子育て真っ最中でした。
そのとき子供とことばについて啓示のような出来事に出会いました。
当時5歳だった息子が300キロ離れた大学病院に入院していたときのこと。
私がそばにいない夜、息子はお絵かき帳にたどたどしいことばを書き連ねていたのでした。
「もうすぐたあいん(退院)よ/ぼくはよにんかぞくよ/おとうさん/おかあさん/おねいちゃん…」。
なぜ好きな絵ではなかったのか。どうしてことばだったのか。その理由をこの本で知りました。
著者は福音館書店の松居先生です。
子供たちは絵本を通して、
ことばに「生き生きとした喜びをもたらしてくれる力があること」を
身体で感じとるのだと書いておられ、こう続けます。
子供はそんな「おいしいことば」を覚えるのではなく、食べてしまうのだと。
私はなんだか腑に落ちた気がしました。息子は夜の病棟でひとり無意識にことばを紡ぎ、
それを食べて力としていたのでしょう。本書は問いかけます。
大人は「おいしいことばを日々の糧として子どもに口移しで食べさせていますか」と。
以来、この本が私の子育ての戒めであり、希望になり、松居先生に感想を書いて送りました。
すると後日、こんなお返事をいただいたのです。
「おたよりのことばはすべて私に深いよろこびをあたえてくれました」
「人と人とを結びつけるのはことばでしょう」
「ことばが慰めでありよろこびであり力であるでしょう」
今、ネットにはぬくもりを置き去りにした心ないことばがあふれています
慰めのことば、よろこびのことばを求めているのは大人たちなのかもしれません。
絵本を見ている子どもたちは、「おいしいことば」をたくさん食べているのでしょうね。
だから、たくさんのことばを絵本をとおして、語りかけていきたい。
これからも子どもたちの大好きな絵本タイムを大切に過ごしていきたいです。